この記事では、知る人ぞ知る英語力アップの秘策、「文通」についてお話しします。
意外かもしれませんが会話力まで伸ばすことができるんですよ。ペンパル(ペンフレンド)を持つことによってどんな力がついていったか、私自身の体験を踏まえながら、文通ならではのメリットについてまとめてみたいと思います。
「文通」は英語力アップにかなり有効だった
ペンパル・ペンフレンドを作ることは英語力アップのためにかなり有効な方法です。
これから、私自身の体験談をお話ししながら、英語での文通を通して具体的にどんな力をつけることが可能なのかお話していきましょう。
英語での文通を始めたきっかけ
私が初めて英語に興味を持ったのは小学生の頃でしたが、中学に入り英語の勉強が本格的に始まったことを境に私の英語への関心はますます高まり、英語を使えるようになりたいという想いはますます強くなっていきました。当然英語力と呼べるだけの英語力はまだありません。それでも私は英語を使って外国人とコミュニケーションを図れる機会があればそれに飛びついていました。
そんなある日、英語の先生が、「海外の子と文通してみないか」と誘ってくれたのです。即座に食いついた私は、まずはあの日本郵便運営の「青少年ペンフレンドクラブ(通称”PFC”)」から、
その後、現在もペンフレンド紹介のサービスを提供し続けている「国際ペンフレンド協会」も利用して、ペンパルの紹介を受け、文通をスタートさせました。
最初のペンフレンドはオーストラリアの女の子でした。メールと違って手紙ですから返信が来るまでは気長に待たなければいけませんし、筆まめではない人もいて返信が遅い人もいたり、話が盛り上がらず自然消滅してしまうようなこともあります。お互い色々なことに興味があって学校生活も忙しい十代前半の気まぐれな子ども同士ですからなおさらです。
できるだけコンスタントに海外からの手紙を受け取りたかった私は、色々な国に複数のペンフレンドを持っていました。アメリカ、ポーランド、オランダ、ケニア、ザンビア、イタリア、ポルトガル……英語圏でない国の子の場合、最初の1通だけ英語であとは遠慮なしに母国語で書いてきて、結局返事が出せなくてあきらめたこともありました。でも、縁とか相性って面白いですね。お互い英語圏ではないから英語はカタコトなのに毎回便箋4枚5枚になるほど話が盛り上がる関係を築けたこともあります。プレゼントのやり取りもずいぶんしましたね。そういう相手とは、後でも書こうと思いますが、大人になっても連絡を取り合う関係になっていたりします。
文通で得た具体的な英語力
文通で得た具体的な英語のスキルは次のようなものを挙げることができます。
まず、書く力(ライティングのスキル)、読む力(リーディングのスキル)、そして会話力(スピーキング力)です。そして、これらの力を構成する要素として、さらに細かく見ると、文法(グラマー)、表現(フレーズやイディオム)、単語・語彙力(ボキャブラリー)をつけることができました。順に説明して行きますね。
書く力
書く力、これは、上で挙げた文法と単語、表現力が総合的に付いた結果として書く力がついたんですね。
そしていずれに関しても、ついたのは実用的な力でした。
ここでいう文法の力というのは、実戦力と乖離している、いわゆる「知識としての文法」ではありません。文の組み立て方、型ですよね。これがつきました。
そして、実際に相手に伝えようという想いで書くことで、シンプルなものから徐々に複雑な(長い)文章へと組み立てるスキル、それを繋げるスキルが身についていったんです。
そして、単語力、つまり語彙・ボキャブラリーですよね。文通をするとこれもかなりつきます。自分の身近なものの呼称、趣味に関する単語、そして感想をいう力、出来事を言う力、感情を表す表現、文通ではこういったものをよく使いますよね。
これって、いわゆる「日常会話」に必要な単語表現と被っているの、お気づきですか?それとフレーズですね。そうしたものも実際に相手に伝える手段として使ってみることで、単なる暗記とはちがって、しっかり定着し「自分の語彙」にすることができたのです。
読む力
そして、読む力ですね。やっぱり手紙の返事って何が書かれているのか気になりますから、一生懸命読みます。これが最初のうちはけっこう苦労しました。英文を読むということに加えて英字という文字を読むのもたいへんでしたね。なぜかというと、これ、面白いことに国によって特徴的な字体と言いますか、その国の人共通の手書き文字のクセというのがありまして、筆記体でもいわゆる筆記体を学ぼうと思った時にお手本となるようなスタンダードなあれではなくて、その国独特の字の崩し方・繋げ方があるんですよね。ただでさえまだ英文に慣れていないのに、そういう文章を四苦八苦しながら解読する。ほんと、文字通り「解読作業」なんですよ。
それでもやっぱりペンパルという「友だち」が言っている(書いている)ことは理解したいじゃないですか。そんな感じで苦労して読んで理解しようとする。それでも、だいたい自分の書いたことへのレスポンスであったり、自分と同年代で趣味や興味の対象なんかも似ている人の書くことですから、最終的にはきちんと伝わるんですよね。伝わり具合が違うんです。
それに、自分が書き上げたものもそうですが、相手からの返信も音読していましたね。当時は、少しでも使える英語が増えていくことが嬉しかったですし、英語を使っているということにも満足感がありましたから、つい声に出して読みたくなったんでしょうね。結果的にこれは良いトレーニングになりました。知らず知らずに良い学習のプロセスをたどっていたんだと思います。
会話力
そして文通の間接的な効果として、会話力もアップしました。今回の記事で一番お伝えしたいことはこの「会話力も文通でついた」という所なので、これについては次でくわしく説明して行くことにします。
会話力も文通でついた
文通が会話力の基礎をつけてくれたというと意外に思うかもしれません。
日本の英語教育は読み書き重視だからいつまでたっても話せるようにならないんだ、という声はかなり昔からずいぶんと聞かれます。一方で、読み書きを重視することで会話力もアップしていくという意見も根強くあります。某有名な通訳の方も、この意見でした。私の意見はつい最近まで、前者でした。なんて古い考え方なんだ。だからいつまでたっても話せるようにならないんだ、と憤っていましたもんね、実は。
日本の英語教育はまちがっとる
この手の話を聞くとき「読み書き重視」という言葉から学校の英語の宿題のようなものを連想していたんですね。そのせいで文通のことが意識に上がらなかったんですね。自分の英語との関わり方を振り返ってみると早い段階では文通がかなり大きな比重を占めていることに気付きました。つまり書くことを通したトレーニングです。そして、それによって確かにスピーキング力はついていたんです。
なぜ、文通で会話力(スピーキング力)がついたのか
では、なぜ書くことと読むことから成る文通でスピーキング力までつけることができたのか、考えてみたいと思います。
文通の、「書く」プロセスがどう会話力のアップに役立ったか
まず、英語で手紙を書くという作業を通して何が身についた結果会話力までアップさせることができたのか、考えてみると次の3つの力が付いたからという結論に至りました。
▲自分に関係した語彙がついた
▲自分で書いたものを繰り返し読むことで文章(表現)が定着した
文通の「返信を読むプロセス」で身についたこと
もちろん読む力、そして英語の表現ですよね。
私は届いた返信を音読していました。相手は英語圏の人であったり、英語圏ではなくても日本人の私よりずっと英語を使うことに慣れていてこなれた表現を使ってきます。それを声に出して読むことは、とてもいいトレーニングになりました。単語にしてそうです。趣味が合う、話が合う相手からの返信ということは、相手が使った単語は自分が英語で雑談などをするときに使う可能性の高い言葉ということです。
こうしたものが返信を受けるたびに蓄積されてくるわけです。
文通そのもので身についたこと
文通という行為そのものを通して得たものも大きなものでした。それは、一言で言うと、英語を使うと言うことに対する自信、これです。
これは、自分が外国語を使っているという自信であったり、そしてそれがちゃんと伝わる喜びだったりですね。そして同時にこれくらいの英語でもいいんだという安心感も覚えました。そしてさらによかったのは、それによって、英語に対する気負いがなくなったということです。そうなると、もっと単語や表現を覚えてもっといろんなことを伝えたいという気持ちになってくるんです。
どんな手順で文通に慣れていったか
英語で文通を始めたのは中学生の時です。1年生の後半か2年生の始めあたりだったと思います。英語の成績はよかったですが、当然中学1年2年あたりの英語力なんてたいしたもんじゃありません。まず、英語の手紙の書き方の本を買いました。例文集のようなものですよね。例えば季節ごと、イベントごと、シチュエーションごとなどに使えるフレーズがまとめられている本です。例文集と違うのは宛名の書き方やグリーティングカード用の挨拶、手紙特有の表現いわゆる「結語」(”Best Regards”とか”Sincerely yours”とかああいうやつです。「かしこ」とか「敬具」に相当する言葉ですね)なんかもたくさん書いてあることです。
最初のうちは、ほとんどそこから例文を選んで、書き写していたような状態でした。
そして、少し慣れてくると、その文の中の単語を入れ替えたり、学校で習った表現を混ぜてみるようになってきます。
そうこうしているうちに、だんだん、それだけではいいたいことが十分に言えずにもどかしくなってくるわけです。そこで、日常会話の例文集を買いました。そして、辞書で引いて、例文集の例文の中に、自分が使いたい単語を組み込む、そんな感じで少しづつ自分の書きたいことが例文の丸写しではなく書けるようになっていきました。
文通だから上達したこと
では、他の手段と比べて、文通だから上達したといえるものはあるのでしょうか。考えてみました。
ただ文章を書くだけとは違うこと
気持ちが入ってますよね。こういうとすごく抽象的だなと思うでしょうが、これって語学では本当に重要なことです。ある出来事について楽しかったと書くとき、実際に体験したことを思い出して書いているわけですから、その情景をイメージしているわけですし、その言葉に対応した感情もちゃんと伴っているわけです。こうすることによって、その表現と感情やイメージが紐づけされていきます。そうすることによって、外国語でありながら「自分の言葉(言語)」として英語が使えるようになっていくんです。これが、ライティングの参考書などで問題を解くということになると、いくら場面をイメージしながら書いたといっても、そこまでリアルな体感は伴わないですよね。やはり、身になるスピードはどうしても遅くなるように感じます。
会話練習とは違うこと
これは、ずばり、書かなければコミュニケーションが成立しないということでしょうか。
会話だと、なんとなくジャスチャーや表情で伝わってしまいますよね。単語を並べても伝わりますし、なんとなくフィーリングで意思疎通ができてしまったりします。
こんな感じでも対面だと案外うまく伝わって意気投合しちゃったりするじゃないですか。↓↓
Umm…I guess…ugh…(身ぶり手ぶり)you know…(ジェスチャー),Right?!
そうやって少しづつ英語に馴染んでいくというのもとてもいいことだとは思うんです。
でも、いつかはその壁を越えなくてはなりません。
文通というのはある意味、アウトプットした分だけしか伝わらない。ある意味、強制的にアウトプットしなくては先に進めないスパルタ学習法です。
チャットではなく文通ならではのメリット
今なら、チャットでもいいんじゃないという声も聞こえてきそうですが、やはり文通ならではの利点はあります。まず、タイピングよりも手書きならではのメリットですね。手書きの方が、タイピングで文章を書くときと比較して、より脳が働くという研究結果もありますよね。
また、チャットよりも時間をかけることができるというのもメリットです。何度も書き直して試行錯誤しながら文章を組み立てていくことができます。これが、文通よりはスピードを要求されるチャットではそうはいきませんからね。ある意味、このアナログさが、じっくり英語力を育むための時間になってくれるともいえます。
まとめ
オンライン英会話に英語学習アプリ等、便利な学習ツールがあふれている昨今ですが、地道に、しっかりとした英語力の土台を作るのには、こうしたアナログな方法も大いにおすすめできます。あなたも、ペンパルを作ってみてはいかがでしょうか。
おまけ
ちなみにその頃できたペンパルの一人とはずっと連絡を取り続けています。連絡手段はいつしか手紙からメール、メールからハングアウトでのメッセージのやり取り、スカイプや電話といった方法に変わっていき、文通という枠を超えた交流が生まれ、親友と呼べる友だちの一人となっています。もうペンパルではなく幼なじみといった感覚ですね。
価値観・人生観、考え方がそっくりな人というのは、なにも同じ国の人間だけとは限りませんからね、ペンパルを見つけてそうした一生付き合える親友との出会いを果たすのは人生の可能性を広げてくれるエキサイティングな体験ですよ。