この記事ではタイトル通り、準1級に合格してから1級の合格前の辺り、伸び悩んでいた私がどうやって足りない部分に気付きブレイクスルーを果たしたのかについてお話しします。
最初にお伝えしておきますが、「165円」の部分は重要な部分ではありません。
英検のみならず、TOEIC受験生、ひいては英会話学習者にいたるまで、
中級くらいになったけれどそこから伸び悩んでいるという人みんなに読んでもらいたい記事です。
伸び悩んでいた私に足りなかったもの
突然ですが、料理愛好家の平野レミさんはこう言いました。
みんなからバカにされるけど、私の財布はジップロックなの。
(中略)
この年になってやっと自分にピッタリのブランドに出会えたわ。やっぱりキッチンにあったのね!
童話『青い鳥』でも、そうですが探し求めているものは意外な所にあったりします。
私が英検準1級に合格したあと意を決して1級の受験勉強を始め、そして受験をするのですが、本当に伸び悩みましたね。「あと一歩」の所からがほんとうに長かった。
あと一歩なのにその一歩が越えられる気がしない。どこまでやれば合格できるのか、
途方に暮れる自分と、とことんやってやるという負けず嫌いな自分が交互に現れる日々でした。
そんなとき、私は一冊の本と出会いました。
『英語資格三冠王へ!』(明日香出版社)という本です。ここでいう英語資格三冠王とは、TOEIC900,TOEFL250、そして英検1級のこと。そして本の内容はというと、中級者から上級者へのステップアップに効果的な勉強法とトレーニング問題で構成されている参考書件問題集といった感じです。
英語の難関資格に合格するための参考書ですが、必要なマインドセットに関しても多くの紙面を割いてあります。その中の「目標は高く、行動は謙虚に!」と題された3ページに渡る筆者のエピソードとそれを踏まえたアドバイスはその後の私の学習の方向性を決定付けました。
この中で、TOEICで満点を取るために文法問題を完璧にすることの必要性を感じた筆者の妻鳥千鶴子さんは、高校文法の文法書を始め文法の問題集をかたっぱしから解いたと語っておられます。そして、その次のエピソードが最も当時の私の心にガツンとくるものでした。妻鳥さんはある時、文法が苦手とこぼしていた準1級の合格したばかりの知人に旺文社の『基礎文法問題精講』をプレゼントした所、喜んでもらえるどころか、「少しいやな顔を」されてしまったのだとか。
今思うと、準1級にも1回でパスして英語は得意!と思っていた彼女にすれば、「基礎」という2文字にプライドを傷つけられたのかもしれません。
こう、理解を示しつつも筆者はこう続けます。
まだまだ基礎が足りない人ほど「基礎」という字に抵抗を抱く傾向があるようです。
自分のことを見透かされているように感じましたね。
確かにその通りでした。きっとこのとき、私が同じ本をプレゼントされても同じようなリアクションをとってしまったに違いありません。
なんでもそうなのかもしれませんね、大人になって、色々な人と接するようになると、
ちょっとエラそうにこの分野のエキスパートだからって振る舞いをしている人は意外にまだまだなことが多くて、その分野で超一流の人の方がまだまだ勉強が足りなくてって謙遜している。
準1級に合格した頃の私も、態度にこそ出しませんでしたが、自分の中では「自分は人より英語ができる」という認識になっていました。準1級に受かったのは十代でしたから、なおさら生意気な思考回路になってしまっていたのかもしれません。自信と過信というのは、区別しないといけませんが、これがけっこうむずかしい。私の中で自信が増すと同時に過信も大きくなっていったのでしょうね。それが教材選びにも反映されていました。より高度なもの高度なものへと意識が向かっていったのですね。
それは、少しでも高度なものをやって知識やスキルを上乗せすればことであと一歩の壁を超えられるはずとの想いももちろんありました。中級レベルの教材に対してこのレベルの教材はもうこんなのは簡単すぎるからとまるで眼中にないかのような認識だったのです。思えばこの本を購入したのも、「三冠王」というそのタイトルから最高レベルとの印象を受け、これをやれば最強という気がしたからでした。その中で上のようなことが書かれていたのです。
上でお話ししたエピソードに鼻っ柱をへし折られた私は、改めて我が身を振り返りました。自分の英語力は本当に上級なんだろうか?自分は本当に英語ができるんだろうか?自分の基礎力はゆるぎないものなのなんだろうか?そこで、はたと気付くのです。いや、まったくそんなことないんじゃ…
会話で言いたいことが言えるようになっている、でも文法力は自分でも自覚できるほどたいしたことがない、仮定法とかマトモに使えないし……
自分の本当の現在地が見えていなかったんですね。このサイトで、教材選びは教材よりも先に自分を知ることがポイントですよと繰り返し書いているのも、この時の経験があるからです。
あと一歩の壁を超えるのは上乗せじゃなくて底上げなんじゃない?
そこまで気付いたとき、トンネルをさまよっていた私にふと光が差しました。
最後の決め手は高校英語にあった!
レミさんの理想の財布がキッチンという意外な場所で見つかったように、
私に必要なものも意外な所にありました。語学書のコーナーではなく、高校生の参考書コーナーです。
私が手に取ったのは日栄社から出ていた「10日で確認 基本英文(文法・構文)150チェックノート」という本でした。これは重要な文法と構文を用いた150の例文がまとめられているもので、左ページに英文、右ページに日本語訳が書いてあり、ページ下には解説が書いてあるという作りになっています。
厚さにして3ミリあるかないか、それに付録としてさらに薄い問題集(暗記した例文の確認問題)が付属しています。値段もこの版は165円プラス税という安価なものでした。
なぜこれを選んだかというと、冒頭に次のようなことが書いてあったからです。
今まで勉強してきた事柄が断片的で,おぼろげで,何となく不安だと思う人は,10日間頑張って,文法と構文のカン所をマスターして下さい。
まさに自分がそうでした。
この本は高校英語の本で、レベル的にも量的にも準1級くらいのレベルにある人には簡単に感じられる内容です。
実際私も特に苦労するわけでもなくこなすことができました。
なのに効果は期待通り、いや、期待以上だったんです。
上で引用した本書の狙いのようなもの通りの効果が得られたんですね。
英語で最後の仕上げのことを”finishing touch”と言ったりしますが、
私にとってはこの本はまさに英検1級合格のための最後のひと筆でした。
なんだか、グラグラしていた土台が強固になってような感覚を覚えました。
やはり、知識・スキルの上乗せにばかり目が向いていた私に足りない最後の一歩は、
基礎に戻ることだったのですね。
基礎に戻ることを徹底した学習を経た私は体感的にも力がついたなという実感がありました。重心がしっかりしたという感覚です。そしてその実感通り、その後の試験で無事あと一歩の壁を越え、合格を果たすことができたのでした。
そして、こんかいお話しした経験で、それまでの予想と違った点は、最後の仕上げはものすごく大量に特別なことをしなければならないというわけでもなかったということですた。
冒頭で平野レミさんの言葉を引用した所で、サイト名に相応しく料理で例を挙げてみようと思いますが、なんだか煮物を作る時の調味料の使い方に似ています。味が決まらないとき、つい砂糖や醤油が足りないのかなと考えてしまう。でも、実は足りないのは酢をほんの少々垂らすことで、それだけでしっかり味が決まる。私が、英検1級の勉強で目を向けていたのは砂糖や醤油を大量に足すことだったんですね。
まとめ~この記事を通して伝えたいこと~
この記事の趣旨は、伸び悩む人は「基本英文(文法・構文)150チェックシート」を使うといいよというものではありません。
数百円の教材で準1級から1級に合格できるよという話でもありません。
高校英語の復習が役に立つかもしれませんよ、これは二番目くらいに伝えたいことですが、一番目ではありません。
それよりもこの記事を通してお伝えしたいのは、3つ、基礎の重要性、そして思い込みに気付いて発想を変えてみることの重要性、そしてほんの些細なきっかけで最後の壁は超えられるということです。
あなたがもし、中級までは来たけれどその後なかなか伸びを感じられないんだよねというのであれば、基礎力は盤石か、こういうやり方しかないと思いこんでいる勉強についてなにか別のアプローチはできないか、見なおしてみると突破口が開けるかもしれません。そしてそのアプローチはなにも大袈裟なものである必要はなく、わずか3ミリの厚さの本を読み直すことなのかもしれないのです。