改めて説明する間でもないかもしれませんが、英検1級は、最も難しい語学試験の一つです。英検1級の下には準1級がありますが、この2つの間には大きなレベルの差があります。そんな英検1級、独学で合格することは可能なのか?短期合格のためには何が必要なのか?この記事では、私自身の経験を踏まえながら考えてみたいと思います。
まずは、「ムリ」っていう思い込みをなくす。
思い込みがなくせたら次に作戦を立てよう。
英検1級に独学で合格することは可能か?
私は準1級取得後に初めて1級の試験を受けた時、そのレベルの差に愕然としました。もう全然違う。別世界だと感じました。
そんな最難関の試験である英検1級に独学で合格することが可能かと聞かれれば、答えはイエスです。
現に独学での合格者がここにいます。
私は高学歴でもなければ、外国語学部出身でもありません。英文科卒でもなければ、帰国子女でもない。留学経験すらありません。学校の勉強も大嫌いでした。宿題はいつも休み時間に慌ててするようなタイプです。
そんな私でも合格できたのですから、あなたにできないはずがありません。
しかし、単に「私が合格できたから」では説得力のある理由付けになりませんから、もう少しくわしく説明しますね。
合格率だけを見れば英検1級は立派な「難関資格」です。しかし、難関資格というだけで独学ではダメだとしり込みしないでください。難関資格であっても、英検1級は独学に向いている試験だと私は思います。なぜなのか。
英検1級は独学向きの難関試験だと思う
他の多くの難関資格との違い、
端的に言ってしまうと、英検1級は「言葉」の試験であるということです。
言葉を覚えるということは人間に備わった能力です。特殊能力ではありません。
特別なセンスや才能が必要な試験ではないのです。これまで英語を学習してきた延長線上にあるにすぎません。
例えば数学などは一度つまずいてしまうと先に進むことが難しくなります。法律などの学習も同様です。最初に用語の定義を誤って覚えてしまうとたいへんです。また、土台となる考え方の道筋を正確に押さえておく必要があります。
上に挙げたような性質のものは、独学で学ぶと間違って覚えていることに気付かずに勉強を進めてしまっていて、いざ問題を解こうとするとまったく解けない、ということが起こってきます。
そうしたものは独学には向きません。こういうタイプの場合、基礎をスクールなどでしっかり学んだ方が遠回りにならずに済みます。
一方、英語はどうでしょう。
その点に関してさほどシビアではありません。
単にその単語の意味を知っているか知らないかというだけです。リスニングにしてもそうです。聴き取れるか聴き取れないかです。
冠詞がカンペキにできなければ、仮定法に進むことはできない、なんていうこともありません。
上で挙げたもののように順を追って勉強しなくても知識・スキルを、試験が要求する一定量まで積み重ねていくことで合格することができる試験なのです。
では、独学での「短期合格」も可能だろうか?
しかし、独学で短期合格は可能なのかと問われれば、今度は迷ってしまいます。
恥ずかしい話ですが、私は5回以上受けました。二年間英検1級ための勉強をしていたことになります。
誰かに強制されたとか、必要に迫られての受験というわけではありませんでしたから、プレッシャーは感じませんでした。その点は気楽だったと思います。
しかし、気楽だったからといって苦しくなかったというわけではありません。受験に関して、まったく苦労しなかったのかといえば、これも答えはノーです。
私が英検1級受験で苦労した点~なぜ合格までに時間がかかったのか~
何がたいへんだったのかこれからお話ししていくことにします。それこそが、そっくりそのまま「受験を長引かせていた要因」であったと今は分かります。つまり、ここを克服すれば独学での合格はもちろんのこと独学での「短期」合格が見えてくるはず、と私が考えるポイントです。
試験の範囲が不明確で学習計画が立てられない!
私の合格を長引かせる要因となったもの、それは学習計画でした。
学習戦略と勉強のスケジューリングと言い換えることができるでしょうか。
これは試験の範囲がよく分からないことが原因でした。
言い換えれば、何をどこまでやればいいのか分からないということです。
今のようにネットで楽に情報を集められる時代ではありません。経験者のブログなども読むことは当然できません。教材となると当然、書籍がメインになりますが、その書籍も英検1級の対策本は限られていました。
ただでさえ、ハイレベルな試験です。覚えることは膨大です。その上、試験範囲がはっきりと分からないのです。これだけやれば合格するだろうという指針がありませんから、まさに暗闇の中を手さぐりで歩くようです。
指針がないということは、自分が正しい方向性で勉強をしているのかも分からないということです。ですから、不合格が続くとだんだんと疑心暗鬼になってきます。本当にこんな勉強をしていて合格できる日がくるのだろうか、という疑問が生じてくるのです。
いったいどれだけ覚えれば合格ラインに届くのか、途方に暮れてしまう。最初のうちは学習戦略などあったものではありません。
英検1級は語彙だけでも膨大な量を自分のものにする必要があります。これはけっこうキツイ。いや、かなりしんどいものです。
当時つけていた学習日記に「炎天下のもと、ピラミッドを独りで建てている気分」と書いてありました。
もちろん語彙だけの試験ではありませんから、他にもやるべき勉強があるわけです。そしてどれもレベルが高い。
それによってどうなるかというと、バランスよくやるということも難しくなってきます。
何をどれだけやればいいのか、つまりノルマが見えませんから、どこにどのくらいの時間を割けばいいのか自身が持てないのです。
いわゆる「ムリ、ムラ、ムダ」が出てきます。
どれも試験勉強の敵です。
難関試験というのは総じて複数の分野をバランスよくこなさなくてはいけません。英検1級もそれは例外ではなく、苦手分野を残したまま合格することは難しいのです。
よく「皿回し」に例えられますよね。皿回しはお皿の回転が鈍ってくると地面に落ちて割れてしまいます。常に複数のお皿の回転スピードを保っていなくてはいけないのです。
最初、本当にこれがたいへんでした。
ボキャブラリービルディングに入れるとリスニング対策がおろそかになる。
かと思えば、リスニングは楽しいので、つい時間を費やしすぎてボキャビルをさぼってしまって、そうこうしているうちに覚えたはずの単語が頭から抜けている。あ、エッセイの対策もしなきゃ。
得点の配分と自分自身の弱点を照らし合わせて、合格に必要な力をバランス良くつけていかなくてはならないわけです。たっぷり時間が取れればいいですが、英検の勉強だけをしているわけにはいきませんからね。可処分時間に応じてうまく時間のやりくりをしていかなくていけません。それを試験日という照準にあわせてうまく調整していかなくてはいけない。
私などは、ふだんのスケジュール管理も苦手な方ですから、これは至難の業でした。結局最後まで手探り状態だったと記憶しています。
「戦い方」が分からない!~戦術面の問題~
次に苦労した点、それは、戦い方が分からないということです。
これも試験合格まで時間がかかった原因です。
戦い方が分からないというのは、上でお話しした「学習戦略」の部分ではなく、今度は「戦術」の部分になります。
試験での解き方(解法テクニック)、時間配分などですね。
試験ですから、勝ち負けがあります。勝ち負けがありますから、そこにはふさわしい戦い方があります。ましてや難関試験です、戦術面をおろそかにして合格などありえないのです。
英検1級、特に一次試験は戦術で勝負が決まる試験です。合格した今振り返ってみると、私の勝因は戦術面での成功でした。
学力がついていて戦術面の対策がイマイチな人と、学力的にはあと一歩かもしれないけれど戦術面に長けている人であれば、後者が勝つ試験だと断言できます。
小手先の受験テクニックとは違います。これをモノにするのもそれなりの時間がかかります。
そこに関しても、私が受験していた当時は情報が少なかったですから、戦術なんて、最初はまったくそんなもの意識できていないわけです。受験で失敗を重ねるうちに徐々にマズイ点に気付いてくるという感じでした。ですから自ずと合格まで長い時間がかかってしまったのです。
つまり、まとめると……
ここまでのお話をまとめましょう。
範囲が膨大でしかも不明確だった。それによって、学習戦略を立てられなかった。可処分時間に応じて配分することが難しかった。試験での「戦い方」が分からなかった。
これが、私が合格するまでに時間がかかった理由です。
つまりこれから独学で勉強を始めて、短期合格を目指すあなたには反面教師にしてもらいたい点、この点を攻略できさえすれば独学での短期合格は見えてきますよ、というポイントということですね。
①試験範囲を明確にし絞り込む
②適切な学習戦略を立てる
③可処分時間に応じて学習のノルマを配分する
④試験での戦い方(=「戦術」)を身につける
最後に、独学で英検1級の受験を考えているあなたへ
あなたがこれから英検1級に独学で挑戦してみようと考えていて、なおかつ短期で合格したいというのであれば、この記事でお話しした点をどう攻略するかがカギだと思います。
難関試験というのは、結局のところ、試験と自分を知ること、そして試験が求める力と自分実力の差を埋めるための学習戦略を立てること、そして、それをもとに可処分時間内で勉強計画を立てて、いかにそれをうまくこなせるか、これで決まるのだと思います。
裏を返せば、学力・記憶力、理解力はそこまで重要ではありません。英検1級合格に「学力」や「頭の良さ」というのは殆ど関係ないというのが合格してみての私の感想です。
そして、この記事で書いたことができるのであれば、スクールであっても独学であっても大差はないというのが私の意見です。
英検1級で求められるのはトップレベルの語学力、確かにそれは正解です。しかし、私に言わせればそれよりもトップレベルの計画能力と実行力、そして継続する力の方が求められている試験です。
スクールに通って勉強する意義って、何だと思いますか?
スクールに通うというのは、結局、試験の範囲と傾向分析をプロに任せるということ、戦い方のヒントを与えてもらうこと、そしてペースメーカーを提供してもらってムリムラムダがなく勉強を勧められるようにすること、これに他なりません。
①試験の範囲・傾向の分析をプロに任せることができる
②戦い方のヒントを得ることができる
③勉強のペースメーカーとなる
今お話ししたことが、市販の教材や無料の学習ツールなどを駆使して自力でできるのならば、それにこしたことはありません。スクールに通うメリットは実はそれほどないと思います。幸いにして、今は上の点をカバーするような優良教材も出てきているようです。ますます独学者に優しい時代になってきていると言えるでしょう。
あなたがもし、英検1級に挑戦してみたいけどスクールに通う時間(あるいはお金)もないし……と迷っているのであればぜひ思い切って一歩踏み出して独学での取得にチャレンジしてほしいと思います。難しい試験ですが、それだけ価値のある資格です。大丈夫。独りでも合格できる試験です。その際には、この記事でお話ししたことを念頭に教材を選び、正しい方向性でバランス良く学習を進めていけるように意識してみてください。
このサイトでも少しずつ英検1級関連の記事を増やしていく予定です。