前に書いたこちらの記事「英検1級リーディング対策・長文攻略法」の中で、長文多読は勉強の効率という観点から考えるとおすすめしませんよ、というお話をしました。
そして、その代わりとしてご提案したのが、英文はどういう構成で書かれているのか、英文を書く時のお約束事を学ぶことでした。
英文がどのように書かれるかについての約束事、それが「パラグラフライティング・セオリー」というものです。
英検対策について書いた別の記事「英検1級学習の方向性」の中で、これを学ぶのに最適な教材として一冊の書籍の名前を挙げました。
今回の記事ではその本についてくわしくお話ししたいと思います。
英検1級長文対策のカギは「パラグラフライティング・セオリー」の理解
「パラグラフライティング・セオリー」とはどういうものかを理解し、問題演習を通して自分のものにしていくことを目指した教材があります。
TOEIC(R)テスト990点即解リーディング
という本です。
これはTOEICの受験対策用として書かれた本ですが、長文だらけの試験問題に挑まなくてはならない英検1級の受験生にこそ手に取ってもらいたい教材です。
タイトルにもある通り、スコア990を目指す学習者をターゲットにしていますから、文章に含まれる語彙もそれ相応のレベルですが、この点は英検1級を目指して学習している人であれば問題ないでしょう。
さて、この本、TOEIC990点を目指す人を対象に作られたものですが、難しい単語で構成された長文を読めるようになることを目的としたテキストではありません。
この本の趣旨は、文章を書くためのルールである「パラグラフ・ライティング・セオリー」を理解することで、効率よく英文読解ができるようになるというものです。
私の正直な気持ちとしては、単なる「おすすめ」レベルではなく、リーディング・長文対策としてはこの一冊からスタートするのが最も効率がいいとさえ考えています。
はっきり言ってしまうと、この本の中で解説されていることをまったく知らないまま、何十時間も長文を読むという作業を続けるのは費用対効果が悪い勉強といわざるを得ません。おそらく、力の伸びは満足いくものとはならない可能性が高いでしょう。
「ルール」を知ることで勉強の「ムダ」をなくす
英検1級の問題は、長文がかなりの割合を占めますから、その対策としてたくさん英文を読まなきゃ、という焦りが生じるのはある意味自然なことです。
しかし、それよりまずは、英語の文章の多くがどのように書かれているのか、見てほしいと思います。
何事も「仕組み」や「ルール」をまずよく知った方が近道であることが多いですよね。
英検の長文対策も例外ではありません。つまり、その後の学習がムダのないものになるのです。
あとで別の記事で詳しく書く予定ですが、英検1級は単語の勉強に最も勉強時間を割くべきです。そして、英検1級対策として覚えなければいけない単語数は膨大です。効率の悪い勉強をしている時間はありません。
長文対策は、まずルールを覚えること、これを最優先に考えるとその後の勉強が少しラクになります。
「メリハリ」をつけて解けるようになることで解答の「ムダ」をなくす
上でお話しした、「ムダのないものになる」は勉強に関してだけではなく、試験時間の使い方に関しても言えることです。
貴重な試験での持ち時間を最大限に有効活用できるようにしたいなら、必要ない部分には時間をかけずに、解答を導くために必要な部分はしっかり読む、このメリハリを付けた問題検討が出来るようになること、これは必須のスキルです。
パラグラライティング・セオリーをある程度理解しておけば、このメリハリの付け方が分かるようになります。
上で、長文対策はまずルールを覚えてしまいましょうとお話ししました。
ルールを知ってしまうとどうなるのか。
膨大な長文の中から読むべき部分が浮き出て見えるようになります。こうなると長文の解答もラクに感じられるようになってきます。
勉強は語彙に時間をかける、解答は作文に時間をかける、これが合格を手にするためのキーだというのが私の持論です。作文に解答時間をしっかり割くためにも長文の時間短縮は必須なのです。
「TOEIC(R)テスト990点即解リーディング」は「頭だけでの理解」に終わらせない
この教材のいい所は、単なる説明に終わらせず、問題演習を通して、「パラグラフ・ライティング」への理解を解答のためのスキルにまで高め、試験で使いこなせるようにしてあることです。
しっかり理解したつもりのことが、実戦では使えなかったという経験はないでしょうか?
これは、インプットに偏った勉強をしてしまったことから生じる現象です。
やはり、アウトプットしながら、つまり実際に使ってみながら、体に落とし込んでいくことが試験で使えるスキルにする第一歩です。
この本の効果的な使い方
ただ、英検1級の対策としてこれをひたすら繰り返すというような使い方はしなくてもよいでしょう。
これを何度も繰り返すというよりも、これを一通りこなしたなら、この本で学んだことを使ってまとまった分量の文章を読む練習をしてみてください。
ここはこういうことが書いてあるはず、結論はこの辺りになるはずと、「当たりをつける」という意識が大事です。
何も意識せずに文頭から読んでいくのと、この辺にはこういうことが書かれているはずだと予め予想しながら読むのでは情報を取り込む具合が格段に違ってきます。
よく英文リーディングの訓練方法として「スラッシュリーディング」が勧められますが、英検1級の長文対策としてこれを採り入れるのはあまり効果がないと私は考えています。
基本的にこれは、文の頭から訳していくことを身につける訓練、言い換えれば日本語の語順ではなく英語の語順のまま英文を理解していくための練習法なので、英検1級に出題される長文の分量を考えると、この方法で時間短縮を図ることを考えるよりも、今回紹介した本などで「ピンポイントで問われていることにアクセスし、拾い出す力」を身につけた方がはるかに良いと私は思います。
さて、この本が一通り終わったなら、次に英検の過去問をこの方法を使って解いてみましょう。
答え合わせをするときに、問題文のどの部分の情報が解答に反映されているかマーカーなどでチェックしてみるのも効果的です。
あなたが「当たりを付けた」個所と重なっているでしょうか。
イエスであれば、うまく身についているといえます。
過去問は英検のHPからダウンロードできますから、プリントアウトしてどんどん問題を汚してみることをお勧めします。
作文対策にもある程度は有効
この本は、ライティングのルールを学ぶことでリーディングのスキルを上げることを目的としています。ライティングそれ自体の練習教材ではありません。しかし、この本で書かれていることが身についていれば、英作文問題を解くときに「キレイな」文章がかけるようになることは間違いないと思います。綺麗な文章というのは構成がしっかりしているということですね。ライティングのルールを学ぶのですから、当然といえば当然です。構成がしっかりした文章を書けるイコール採点者に対する印象の良い作文を書けるということですから、そういった点では、作文対策としても直接的ではないにしても一定の効果は期待できる、そんな教材だと思います。
まとめ
今回ご紹介した本のような教材を使って、文章がどのように構成されているかを学ぶ、そして問題を解いて感覚を掴む。そして、それを英検の過去問を使って検証する。英検1級のリーディングはこのステップを踏んで学習してみてください。ただ長文をたくさん読むだけの「長文多読」よりも、ずっと短期間で効果が出ていることを実感できるはずです。
これについても別の記事で改めてお話ししようと思っていますが、英検1級は他の級に比べて教材が少ないので、自分に足りない力を付けるためには現在出ている書籍だけでは不十分と感じる場面も出てきます。
もちろん手を広げ過ぎるのは避けなくてはいけませんが、長文なら長文、リスニングならリスニングと、ピンポイントで対策をしていこうと思った場合に、現在出版されている英検対策の書籍だけでは物足りなさを感じてくることがあなたにもあると思います。
ですから、英検の本以外にもアンテナを伸ばし、使えそうだと思うモノは積極的に触れてみることが大事です。
蛇足ですが、この本がTOEIC対策の教材として有能なのは言わずもがなです。英検の受験生で、TOEICも同時に受験しているという方は、この一冊で英検のリーディングとTOEICのリーディング、両方の対策ができてしまいます。この「お得感」も、私がこの本をプッシュする理由の一つです。この本で書かれている内容を知ったあとは、試験問題の長文を読むときの視線のやり方が変わります。文字通り、あなたの「目の付けどころ」が変わるのです。
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